ハイカラ神戸幻視行
2009.07.06
センター街のジュンク堂書店に西秋生さんの「ハイカラ神戸幻視行-コスモポリタンと美少女の都へ-」(神戸新聞総合出版センター、1890円)が並んでました。帯には「イナガキタルホも、谷崎潤一郎も、竹中郁も、江戸川乱歩も、中山岩太も、横溝正史も、小松益喜も、西東三鬼も、淀川長治も、-みんな神戸を愛していた」
オススメです!
(リードマン)
7月5日付の神戸新聞朝刊に書評が載りました。
大正末期から戦前にかけての神戸は、日本のほかのどこにもないモダン都市だった。本書は、神戸の都市イメージ論・記号論であり、文学地誌でもある―という難しい話はひとまず置く。なにより、幻想の神戸に旅するための最高のブックガイドなのだから。
さて著者とともに、ハバナ葉巻をくゆらせて戦前の神戸を歩こう。トアロードのレーンクロフォードで最新の文房具やファッションを渉猟し、海岸通のオリエンタルホテルでグリルを食べようか。
関東大震災で被災した東京に代わって経済の中心となった大阪から、富裕層が神戸の珍しい洋食や舶来品を求めて訪れた。海外へ行かなくてもハイカラで享楽的な世界がそこにあった。文豪谷崎潤一郎・松子夫妻や“詩人さん”竹中郁もこの消費と美食の都市をこよなく愛した。「細雪」の印象的な場面の多くが、こいさんやいとはんがよく訪れた神戸にある。
また神戸は探偵小説のメッカでもあった。横溝正史も戦前の三宮の古書店で外国の探偵小説雑誌を探した。江戸川乱歩は正史とともにトアロードで、有名な短編「人間椅子」の題材を探した。
特に一章を割いて紹介されたのが、「一千一秒物語」などで大正期の日本に孤高に輝く稲垣足穂。その幻想的な小品で現実の暗部に確信犯的に目をつぶって、トアホテルやハーフの美少女など神戸の魅力だけを結晶のように遊離させ、神戸のイメージを決定づけた。著者の西秋生自身、優れた幻想小説の書き手だけに、足穂が小説の中で架空の神戸をいかに魔術的にリアルに表現したのか、「異化」の手法を詳しく述べている。
中山岩太や小松益喜ら神戸を幻視した写真家、画家にも言及し、現代に連なる神戸の魅力の本質を描ききった好著。同書の表紙も足穂の作品と神戸のイメージを融合させた戸田勝久の美しい幻想画だ。(大町 聡・メディア局)
にし・あきお1954年、神戸市生まれ。商業誌やアンソロジーにSF、ホラー短編を発表。本書は神戸新聞夕刊連載のエッセイをもとに大幅に加筆された。






